挨拶の英語表記はgreetingじゃないかな


ミク視点

Speak low if you speak love.




目が合わない。
話をしようと思っても、時間が合わない。
タイミングも合わない。
私に笑顔が向けられない。

避けられている。
絶対に避けられている。

何かしただろうか。
私の行動が、彼女を傷つけたのかもしれない。
でも、どの行動が?

分からない分からない分からない。

鏡音の二人がこの家に来た時、私に初めての妹と弟ができた。
それが嬉しくて、しょっちゅう二人に構った。
レンは鬱陶しがることもよくあったが、リンは常に笑顔で応えてくれた。
ミク姉ミク姉とキラキラした笑顔で。

そのキラキラ笑顔が好きだった。
さらさらな金髪に大きなリボンがよく似合っていて、キラキラな笑顔がすごく可愛くて。
一緒にいられることが自慢だった。

そんな彼女に私は何をした?
何が彼女を傷つけた?
彼女に避けられている理由さえも自分で見つけられない私に、あの笑顔を見る資格はもうないのだろうか。

カギが開いているのに部屋の中は真っ暗。
なんて不用心、と思いながらリビングの電気をつけるとリンが寝ていた。
冷蔵庫の前で。

なぜ、そんなところで…

寝るならせめてソファでねようよと思わないこともなかったが、久々に間近で見るリンに意味のわからない感動を覚えていた。

だって最近ずっとマスターのところにいるんだもん、と無意味な嫉妬。
私のリンなのに……私の?
うん、私の…可愛い妹。

リボンの先にさりげなく蝶の模様ついてるとか、思いのほか体小さいなとかとりとめのないことをひたすらに思う。

頭の大きさの割にリボン大きすぎるだろという思考にたどり着いてはっとした。
シミ一つないきれいな肌に通るふた筋の線。

乾いた涙の跡だった。

泣かせたのは誰?
レン?マスター?…それとも、私…?

リンの寝顔は、普段の彼女からは到底想像できないほどおとなしくて幼くて、そして可愛かった。
思わず涙の跡にキスを落とす。

ん…?
寝ている彼女に、今、私は何をした?
キス?
そうだ、このキスは可愛がっているペットにするような…
そういう類のキスだ。
外国の人が挨拶でするような…

挨拶挨拶…これは挨拶。
This is Aisatsu!…
あれ…挨拶って英語でなんていうの…?

やましいことはしていない…やましいことはしていない…
無理やり、そう自分に言い聞かせながら、何故か私はその場から逃げた。

“去った“ではない…逃げた。
逃げるようようにしてその場を離れた。

リンが目を覚ましませんようにと願いながら。






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