ファミリーの事情を全て把握しているのは姉さんである


リン視点

Speak low if you speak love.




「おはよう、リン」
朝、リビングに行くと、にへろーんとした笑顔のカイトに迎えられた。

「おはよ、カイ兄」

挨拶を返して食卓の定位置につく。

今日の家事当番はカイト。
食卓に並ぶのは、立派な朝食。
さすが我が家の主夫。

「バカイトー!!」

洗面所から罵声。ドキッとした。
声の主は…

「はーい、今行くー」

タオルで手を拭きながら、カイトが洗面所にいるメイコのもとへ向かった。

「朝からよくあんな声出せるよな、メイ姉…」
いま、起きてきたらしいレンが隣に腰掛けながらぼそっと言った。
まだ完全に目が覚めていないらしく、瞼の四分の一は閉じている。

ぐるっと部屋を見回してルカの立ち位置を確認。
冷蔵庫からヨーグルトを出しているところだった。

「ねぇレン」
レンの耳に口を寄せて小声で話しかける

「ん??」
「あのさ…メイ姉とルカ姉ってどう思う?」
「どうって…なにが?」
「あの2人の関係。なんか、怪しいところない?」

レンはじっとルカを見つめたあと口を開いた
「怪しいっていうか…メイ姉がルカ姉のこと追っかけまわしてるだけだろ」
んで、ルカ姉はツンデレと付け加えた。

昨日のアレは多分メイコとルカで間違いないはずだ。
ルカはまだ冷蔵庫を漁っている。

わしわしと頭を拭きながらメイコがリビングに入ってきた。
ルカにさりげなくちょっかいを出してからアタシの前に座る。

「ねぇリン」

いきなり話しかけられたせいで、食べていたものが思いっきり気管に入った。
メイコの表情は読めない。
何だろう。昨日の夜見てたでしょ?とか?
いや、でも…え…

「ミクのこと起してきなよ。まだ寝てたから」
「は?」
………。

おもわずメイコの顔をまじまじと見つめてしまう。

「なに?寝ぼけてんの?」
メイコは納豆をかきまぜながら、もう一度繰り返した。

アタシに…ミクを…起して…こい…と

正気だろうか…このアタシに?
「…無理」

無理無理無理。
頭を左右にぶんぶん振る。

「でも今起しに行かないと、ミク確実に遅刻するわよ」
平日の朝食に納豆出すとか論外よねぇと無関心に続ける。

無理だ。この精神状態でミクに会うとか無理だ
今のアタシでは、布団の中のミクに何をするかわかったもんじゃない

「レン!」
「えー、やだ」
即答…

「お願い!アタシのヨーグルトも食べていいから!」
「起しに行くくらい自分で行けばいいじゃんか…」

牛乳を飲み干すと、レンはミクの部屋に向かった。
口の周りが白ひげのようになっていたが、あれは教えてあげたほうがよかったのだろうか。

「あーぁ、せっかく寝起きのミクとにゃんにゃんっていうおいしい機会を与えてあげようと思ったのに…」
「……!!」

はじかれたように顔をあげる。
え?いや、この人は…え?
いやいや、この人は一体…いやいやいや

「え?いや、え?」

眼の前のメイコは意味深な笑顔を浮かべて納豆をすすっていた。
文句言っていた割に、大人しく食べるのね…

いや、納豆の事はどうでもいい。
今、この人はなんと言った?

ミクと…にゃんにゃん?

「いやいやいやいや!メイ姉なに言ってんの!!」

メイコはアタシの言葉に答えず、一言ごちそーさまといって席を立った。
席をたったメイコと入れ替わるように、レンとふらふらのミクが入ってきた。
レンの白ひげは消えている。

「おはよう、ミク。あ、そうだリン。あんた、分かり安すぎるわよ」
「え、え?ま、まってメイ姉!」

分かりやすいってなにが!?
メイコに真相を訪ねる前に、彼女はふらりと自室へと消えた。






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