覗かれていることに気づかずに…ってやつ?
メイコは恋することを楽しんでいる模様

メイコ視点

Come,lady,die to live




カイトはすでにつぶれていた。
どうしてこんなに弱いんだろう。
ため息を一つ吐いて青い塊を引っ張る。
7人が暮らすやけに広いこの家は、今の時間はしんと寝静まっていた。
引っ張ることはできても、大人の男をベッドまで持ち上げることはさすがに不可能だった。
諦めてカイトを床に転がした
寝る前に、酒以外の水分を摂取しようと思ってリビングに向かう。
うっすらと漏れる光。
だれか、まだ起きているのだろうか。
耳を澄ませてみても、人がいる気配はない。
扉の隙間から部屋を見渡しても、誰もいない。
誰かがつけっぱなしで出たのだろうと結論付けて台所にむかう。

いた。一人だけ。
なぜかソファの上で丸くなる桃色
無意識にふらふらっとそちらに近づいた。
膝をついて、髪をひと房手に取った。
さらさらというよりふわふわ。

きれいな桃色はとても柔らかかった。

可愛いなと思う。
逃げられても逃げられても、構って撫でくりまわしたいくらい。
私は彼女が好きなのだろう。

起さないようにそっと、顔にかかる髪をよけてやる。
あまりにも心地よくて思わず、頭を撫で続ける。

可愛い
少し震える長いまつげ
可愛い
ゆるく開いた唇
可愛い

可愛いなぁ、本当に。

酒のせいだ、あまり飲んでないけれど…
酔っているせいだ、全然酔ってないけれど…

もういいや、ルカのせいだ。
ルカが可愛いからいけないんだ。

髪をなでる手を止めて、そっと彼女の顔に近づいた。
至近距離で見ても、肌は陶磁のように白くてきれいだった
ゆっくりゆっくり、近付けていく。
触れる直前でそっと目を閉じた。

柔らかい、とバカみたいな感想が頭をよぎった。
彼女の唇に触れている私の唇が異様な熱を保つ。
もう少しだけもう少しだけ、気付かないうちに私は瞼をギュッと閉じていた。

駄目だ息が続かない、そう思って初めて自分が息を止めていたことに気がつく。
名残り惜しく思いながら、またそっと唇を離す。
大丈夫、ルカは起きていない。

当初の目的も忘れて、私はふらふらとリビングを出た。
まるで、初めて恋を知った中学生みたいだなんて思って、感触の残る唇に指で触れた。

恋と中学生の単語で、ふとこの間のリンを思い出した。
あの子も恋を知ってしまった乙女だ。
本人も相手も気づいていないようだけど…

そしてまた思考はルカに戻る
どんだけ、ルカ好きなんだ私と思いながらベッドにもぐりこむ。


熱の上がった体はまだ、私を眠りに誘ってはくれないようだ。







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