7と8の間にあったこと
強いて言うなら7.5
正しく言うなら、7から8で動いたメイコの心情

自分の責任に気がつくのが遅すぎるメイコさん

Let me do as he likes.




帰ってきた二人は、表情があまりにも正反対で、少し笑ってしまいそうになった。


遊んでくれと、ルカは言った。
愛してくれとは、言ってくれなかった。
望んじゃいけないことだって分かってる。
分かってるけど、ほんの少しくらい傷ついたっていいじゃないか…
私だってまだ、人を愛することを忘れたわけじゃないんだから。

ルカに遊んでくれと言われ、どこで間違えたのかなと笑ったとき…
視界に入ったのは、思いつめた顔のルカではなく、傷ついた表情のミクだった。

リンのあとを追うとき、ミクはルカに一言残していった。
たぶん、ごめんという言葉。
確証はないけれど、ミクはそういう子だから…

ただ、戻ってきた彼女は私にも一言残していった。
ごめんとか、きっとそんな類の言葉より破壊力のある…
私の耳元で一言…
「だから、大丈夫って言ったでしょ?」

あぁ、この子には本当に敵わない…
本気で、そう思った。
ミクはこのまま、離れていくのか…と、知った。



「ねぇメイコ。もう、やめよう…こういうこと」
今日のご飯なににする?
そのくらいの気軽さでささやかれた。
ただ少し、近距離で、内容が重たいだけ。

思わず、言わないと決めていた”ごめん”を言いそうになった。
彼女はそれを知っていたのか、気付いていたのか、私の唇を人差し指で制すると

「謝ったら怒るよ」

そう言った。
謝罪の言葉を封じられた私は、待ってよとか、いやだとか、わけわかんないことを口走りながら…

…逃げようとした。

扉に手を掛けた私の腕を、ぐっと掴んで引きとめたミクは、私の知らないミクで。
違う、私が見ようとしなかったミクだった。
謝んないでね、ともう一度呟く。

「あたし、メイコのこと好きだったみたい…だから、だから…ね…やるなら最後までやって」

腕を掴んでいた手の力が徐々に緩くなっていく。
クーラーの音が異様に耳について、気分が悪かった。

「やるなら最後までやって…立ち直れないくらいぼろぼろにして」

見つめてくる瞳があまりにも、真摯だったから…
私の首は静かに、縦に動いた。
うん、と一言そう言って。

彼女にここまで言わせたのは他の誰でもない、私だ。

一瞬の間。
ぱぁっと花が開くように笑った。
私の知ってるミクだった。

「ありがと、メイコ」
そう言うと、背伸びをして唇を重ねた。
一秒にも満たない、ただ触れるだけのキス。
これが、最初で最後。

はじめて告げられた愛の言葉は、はじめて突き付けられた別れの合図だった。

気付くのが…遅すぎた…。
そうだ…彼女はずっと、好きでいてくれていた。
だからこそ…

ミクはルカと仲が良かった。
…知っていたのに……
私と関係を持てば、ルカとの間に何かしらあることなんて、ミクからみても私からみても、明確だったのに……

馬鹿は私だ…

罪だの罰だの、偉そうなことを言って…
そんなことをいう資格も無いくらい…私はただの大馬鹿だ…



ルカは私に遊ぼうと言った。
それを言い訳に、私はルカを抱いたし、ルカも私に抱かれた。
優しくなんて、出来なかった。

痛いくらいに乱暴に抱いた。
恋人のような甘い抱き方も、ミクにしたように優しくも…やってはいけないことだって…
きっとそれが、私に対する罰だ、なんて…


好きになんてなっちゃいけなかった。
ルカも、リンも、ミクも、私も…
きっと、みんな…好きになんて、なっちゃいけなかった。

恋をして後悔したのなんて初めてだった。
貴女を好きなってよかったなんてどうしても思えなくて…。
こんなに苦しいなら、好きになんてならなければ良かった、そう思ってしまうことが一番の恐怖。
いっそのこと、出会ったりなんかしなければ良かったのに…

ルカに初めて抱いた焼けるような恋情も、狂いそうなほど抱いたあの欲望も、いまはただの後悔でしかなかった。

ルカは私を好きにならない。
リンはルカを好きにならない。
ミクは…きっと、リンを好きになれない。
私は…私は…



私の下で、私が恋焦がれた女が喘ぎ、悶える。
衣擦れの音さえもわずらわしい。

下着を脱がすのももどかしくて、脇から指を差し込んだ。
蠢くそこに誘導されるように、そのまま指を突き入れる。

「ま、まって…まって!ぅん…っあぁ、まだ…っあ!」

まだ挿れて間も無いのに、体を大きくしならせて絶頂を迎える。
お楽しみはまだ、これからだっていうのに…

一番乱れてるのはルカだけど、きっと一番興奮してるのは私だ。
手首が痛くなるほどに、彼女の膣をかきまわす。

「もっ…ぃやぁっ…あぁ!こわれ、ちゃ…っんぅ」
「壊れてもいいわよ…そしたらまた何度でも、元の形につなぎ合わせてあげる」

でも、壊すのも私…
髪を振り乱して感じる様子は、やはりこの世のものとは思えない程、美しかった。

「ねぇ、名前をよんで」
「ん、ああ…っ、メ、イコぉ…っ」

何も言わずに、私の名前を呼んでくれたのは誰だっけ…
首をふって残像を追い払う。

ルカを二度目の絶頂に追いやりながら、頭の隅っこで漠然と思った。
このままじゃ、私もルカも、絶対に幸せになれないんだよ…

ねぇ、私…貴女のこと忘れようか…?








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