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海にいこうか…

提案したら、電車とバスで行こうと彼女が言った。
電車の中で、なんだか駆け落ちみたいだねと言って笑った。

別に泳ぎたいわけじゃない。
ただ、海に行ったという事実が欲しかった。
夏の海よりも、私は冬の海が好きだ。

だって冬の海って、彼女の瞳の色みたいじゃない?
どちらかというと、冬の空っぽいけどね、彼女の瞳は


日差しも強く、それをさえぎるものもない。
日射病の危険とか、そんなことも考えずに、私たちはただ海を見つめた。

どれくらいの時間がたったんだろう。
軽く手を引いて、二人して波打ち際に近づく。
サンダルを脱ぎ棄てて、足首まで水に浸る。

彼女の裾の長いワンピースが風にはためく。

私の左手、小指と薬指をぎゅっと握りしめて、彼女は小さく呟いた。

「永遠…が、あればよかったのに…」
永遠なんて存在しないって、その言葉で肯定されたことに彼女はまだ気付かない。
左隣に見える彼女は、永遠なんて言葉をつかいながら腕時計の針が示す先を見つめる。
帰りのバスの時間を気にしながら…永遠なんて…。

懐かしいような波の音の中に、さらさらと流れる砂の存在を感じた。
遊泳禁止の看板は、潮にあてられ、錆びた塗装がはげかけていた。

打ち寄せては引いていく波は、私たちの足元を何度も洗っていく。
存在を確かめるように握りあう手は、あまりにも不格好だ。

ねぇルカ、永遠が…あればよかったのにね。






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