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足音をたてて近付いても目を覚まさないそれは、あたしのベッドで眠っていた。
タオルケットにくるまって、まるで恋しむかのように枕を抱きしめている細い腕。
ぎゅっと握りしめる指先に覗くのは、綺麗なブルー。
彼女が丁寧に、時間をかけて色をのせたブルーの爪。
あたしの爪で存在感を示す赤色も、彼女が優しく塗っていったもの。
肌が真っ白だから、爪にのるブルーがよく似合う。
でも、きっとあたしの爪のような赤も、彼女なら似合うに違いない。

彼女が眠るベッドに腰掛けて、そっと上から寝顔をのぞく。
呼吸をするたび上下する胸と、それに合わせてふるえる長いまつげ。
人差し指で彼女のほっぺたを撫でてみる。
きゅっと閉じられていた口元が、緩やかな弧を描いて笑みの形をつくる。
どんな夢を見ているんだろう。
あたしの夢だったらいいな。

規則正しい呼吸音があたしを誘う。
意識して彼女の呼吸と、自分の呼吸を並べてみる。
ドッキングした二つの呼吸音。
ばらばらな二人が、一つになったみたいで気持ちい。

ねぇ、あたしのこと好き?
あたしは好きよ。
きっと彼女は、あんまり信じて無いんだろうな。
いつだって、不安げに揺れる蒼い瞳。
握り返す手の力も、いつだって恐る恐る。
もっともっと、求めていいのに。
でも、そんな彼女が愛しい。

目を覚まさない彼女の頬を、今度は掌で覆ってみる。
99.9%は彼女に愛されている自信がある。
根拠なんてどこにもないけれど。
でも100%、あたしのほうが彼女の事を愛してるにきまってる。
だって、彼女のためなら死ねる覚悟だって持ってるんだもの。
そんなあたしたちの関係が愛しい。

誰よりも彼女が好き。
誰にも負けないくらい彼女が好き。
あたしは、彼女のほくろの位置だって知ってるんだから。
そんな事実が愛しい。

彼女の笑顔が愛しい。
彼女の泣き顔が愛しい。
綺麗な歌声が
その器用な指先が
愛しい。
几帳面すぎる性格も
恥ずかしがりな性格も
目も鼻も口も耳も
全部が全部愛しい。

規則正しい呼吸音が、今度は眠気を誘う。
彼女を起さないように、そっと隣に体を横たえる。
彼女があたしの枕を抱きしめているように、あたしが彼女の体を抱きしめる。
呼吸音だけじゃなく、鼓動もドッキングできれば一つになれるかな。
ブルーの爪に赤を並べて、あたしは眠りにおちた。






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