ルカ総受けのにおいがする最終章ですた。

ルカメイと見せかけたルカミクのメイ→ルカ

青と赤と…




可愛かった。その場にいた誰よりも。
近づきがたい雰囲気をまとった、綺麗な顔の少女だった。
西洋人形のような彼女に、あたしは夢中になった。
適当な理由を付けて、下の校舎に行くくらい。
ルカが慕ってくれているのは分かっていた。

何を考えているか分からない、と彼女の周りの人々は言う。
無感情なまでに動かない仏頂面。
無機質なまでに波のないアルト。

まわりにそう見えているのなら、それでも良いと思う。
彼女のむき出しの心に触れられるのはあたしだけでいい…
冗談めかして、あたしのこと好き?と聞くと、いつも少しの間を空けて、はいと頷いた。
慕ってくれているのは充分承知している。
でも、その好きは貴女にとってどういう好き?恋愛?憧れ?
自分自身分かっていないその問いを、彼女に問うても答えが出るはずがなかった。


テストで0点を取ったことがあるかと聞かれれば、Yes。
自信をもってはいと言える。
だって、中学の時から定期テストの解答用紙を白紙以外で出したことないもの。
テストは名前を書いたら、あとは就寝時間。
教師もそれくらいのことはもう慣れただろう。

びくびくしながら、まだ年の若い担任に「咲音…国立目指してみないか…?」と言われた時は、思わず笑ってしまった。
そんなに怯えなくたって、取って喰ったりしないのに。
担任の言葉通りの大学に進むのは癪だった。
が、考えるのもめんどくさかったので適当にくじで決めた。

受かったときには、自分でも驚いた。
でも…熱が出るほど驚かなくたっていいだろうに…

「本当になんなんですか貴女は」

むくれた顔でそう言ったルカが、彼女らしくなくて可愛いかった。
離れていくくせに、好きだなと素直に感じる自分の心が憎らしかった。
やりたいことも見つからないまま、身に余る大学に行く。
明らかに友情や愛着では収まりきらなくなった好意。
学校の誇りだ、となれなれしく肩をだく教師たち。
内側に溜まる苦いものを全て振り切るように、ルカの言葉を大声で笑い飛ばした。



二人が付き合っていたことは知っていた。重々承知。
知らないわけがない。
二人が出会う前に、あたしはルカと出会っているんだから。
あたしじゃなくたって知ってるはずだ。
どちらも相当な有名人なんだから。
ルカがなにも言わなくたって、その事実はあたしの耳に届けられる。


最悪なのは世の不条理だと勝手に信じ込んでいた。
最悪なのは…最低なのはあたしだった。
彼があたしのことを好きだと言った。
どうしてもというから…
カイトに責任を押し付けてルカの反応をみる。
最低だ。
彼女の傷ついた顔が…嬉しかった。
彼女もあたしを好きでいてくれた…そんな優越感に浸って…

彼女が別の方向を向いてしまったことに気づかなかった。
あたしが気付いたときには、ルカの瞳には別の誰かがいた。
最低だ。
自分で手放したくせに、彼女の特別な人を憎く思っている。
勝手に好きになって、勝手に傷つけたくせに。

でもなにより…メイコさんメイコさんと慕ってくれた彼を、最後まで自分勝手な都合で傷つけた。
ごめんと言ったあたしに、彼は寂しそうな笑顔で語った。


分かってました。
初めっから…
貴女の心がもっと遠くにあることくらい…貴女がずっと遠くを見ていることくらい…

俺ね、中学の頃からそうなんです。
ルカのこと本気だったんです。
本気で惚れてたんです。
でも、ルカは別の人を見てた。
それが誰だったのか、最後まで分からなかったけど…

どうしても、俺のことを見てほしくて、色んな女の子に手を出したりもしました。
それでも、やっぱりルカの目が俺を見ることはなかった。
嫉妬のひとつも、してもらえなかった…

俺のことを見ていないような…別の誰かを見つめているような、そんな人ばっかりに惹かれるんです、昔から。


貴女もね…そういって彼は話を締めくくった。

ルカの大学合格はあたしの力じゃない。
あたしの知らない誰かのため…
それが悔しかった。

「ルカの合格した大学名聞いて卒倒するかと思った…」
「先輩はもっといいとこ行ってるじゃないですか…」

ルカを変えたのはあたしじゃない。
あたしでは、ルカを本気にさせられなかった。
あたしは、ただ彼女を人形のように、眺めて愛でていただけだ。

でも…
「メイコ先輩は、永遠に私の憧れです。」
笑顔でルカがそう言った。
あたしが引き出せることのできなかった笑顔で。
でも…たったそれだけで、その一言だけで少しだけ、救われる気がした。

貴女があたしだけに見せてくれた弱さを、リクルートスーツと一緒に身にまとった。






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