ミク誕ss

甘…いはず←


ミクリンミク
だけど、リンミク寄り

裏設定だったはずのメイルカがなんか出張ってる…

You Make Me Happy!




しとしとと昨晩から降り続ける雨が、部屋に一つしかない窓を濡らす。
嫌だな、この雨。
どうせ降るなら、もっとざあざあと降ってくれればいいのに…。
そっちのほうが諦めるもつく。

誕生日はデートしようねって約束してたのに。
そのリンちゃんは、急なお仕事でいないし。
メイコとルカにいたっては昨日の夕方から部屋にこもって出てこない。
一体何してるんだか…いや、ナニしてるのか…
クーラーは喉に良くないから、いつもは扇風機だけで暑さを凌いでいるが、今日は除湿だけでも付けたほうが良いかもしれない。
蒸されてしまいそうだ。
誕生日が命日なんて、死んでも嫌だ。

赤とピンクの二人は、私の誕生日とか忘れてるんじゃなかろうか、なんて…
ない、よね?
もし忘れてたりしたら、二人がこっそり隠してるアイスとかカイト君にあげちゃおう。
私は悪くない。
人の誕生日忘れてやーらしいことしてる二人が悪い。

やることもやる気もないときは寝るに限る。
ぼふっとベッドに倒れ込んでみても、睡魔は身を潜めている。
眠くない。

あぁ…私今日になってからまだ一度もおめでとうって言われてない。
なんか悲しくなってきた…

家族のサプライズなんて期待してないけど、おめでとうくらい期待したかった。
毎年みんなのためにケーキを焼いてる私はどうなるの…どうにもならないか…
雨の日はどんなにちっぽけなことでも、悲しくなる。
で、たいてい私は泣く。

嗚咽もなくただ涙を流してることがばかばかしく思えてくる。
小さな声で、リンちゃんのばーかとか呟いてみてもやっぱり虚しいだけ。
声を出したせいで、鼻からわけのわからない水分がつぅと垂れてくる。

枕に染みるのは涙だけで十分。
というより、鼻水が枕に染みつくとか気分悪い。

手を伸ばしてティッシュを二枚とって、鼻に押し付ける。
鼻水を意識したら、急に”泣いている”という実感がわいてくる。

さらに鼻水も湧いてくる。

泣いていることを自覚すると当然、嗚咽も漏れ始めるわけで…
片方の鼻だけつまって苦しい。
つまっていて呼吸できないくせに、異様に水気の多い鼻水だけ垂れてきて気持ち悪い。

ひぐひぐと泣きながら、リンちゃんの名前を連呼する。

「…っ、ぅう…ぃ、リン、ぢゃぁ…ん」

あぁ、ティッシュたりない…と思って再び手を伸ばしても、手は空を掴むばかりで空振り。
カラかよ…

「ダ、イミン…っぅ、グ、わるっ…」

歌姫、初音ミク…なんて惨めなの…
これでも私、稼ぎ頭なのに…

「リン、ぢゃん…の、バガぁ…っ」

これ以上鼻水が垂れないように、使い古されたティッシュを鼻に突っ込んで枕に顔をうずめる。
あ゛ーとかう゛ーとか言いながら、枕をぽかぽかと殴ってみた。
リンちゃんに会いたいよぉ…

ぐずぐずするのは好きじゃないけど、一ついいことがあった。
泣くと疲れるわけで、疲れると睡魔さんも目覚めるわけで…
気付いたら眠りに落ちていた。



「あぁ、やっぱり泣いてる」
ティッシュ鼻に突っ込んだままだし…
タオルケットは床に転がったままだし…

「つか、暑っ!」

ミクちゃんがクーラーを敵視していることを知っているから、噴き出す汗に気づかないフリをして、除湿だけ付ける。
寒いと思えば暑くないさ!

寒い寒い寒いさむ…無理があるな…
じゃぁ…

「ぬるい、ぬるい」

ぼそぼそと呟きながらミクちゃんの寝ているベッドに腰掛ける。
鼻にティッシュ詰めてる美少女歌姫ってどうなのよ…

そろりそろりと、鼻につまってるソレを引き抜いて、ベッド脇のゴミ箱に放り込む。
あらあら…泣き過ぎて顔むくんでる…

「ごめんね…ミクちゃん」

精一杯の申し訳ない気持と、精一杯の大好きをこめて長い髪を手で梳く。
寝顔に向かって大好きと、小さく呟いてみても、部屋に反響して恥ずかしいだけだった。

無造作に投げ出されてる手を取り、節約に節約を重ねた努力の結晶、基誕生日プレゼントを薬指にはめる。
ちょっと気障かな、とも思ったがやってみたかったんだ、仕方ない。

くそう、見た目年齢14歳だからって、精神年齢中二だと思ったら大間違いなんだからな。
給料三カ月分もないし、というかもっと安ものだけど…

まだ傷一つない銀の土台に光る、オリーブグリーンとターコイズブルー。
寄り添うように並ぶ二つの石は、狙ったかのように私たちの瞳の色。

ぺリドットとターコイズ。

自称ロマンチストなんだ、鏡音リンさまは。


「だいすきだ、このやろー」
寝顔に向かって吐き捨てた言葉は、部屋に反響したあと、誇らしい響きになってかえってきた。

でも、彼女が今日、一番聞きたかったはずの言葉は、ケーキを食べる時まで取っておこう。


とりあえず私は、赤とピンクを絞めに行くこととする。

Happy Birthday Miku.
You of the side. It make me happy.








家具通販のロウヤ