シャツの裾掴まれると萌え死にそうだから、やめてほしい
と、こっそり主張してみたする


メイコ視点

Come,lady,die to live




嫌い嫌い、とルカが繰り返す。
私にむかって、嫌いだというくせに私の手を振り払うことはしない。
2週間避け続けたくせに、あんな笑顔をむけてくる。

リンかお前は、と突っ込もうとしてやめた。

ルカもリンも、恋愛偏差値は同じというところか…いや、下手したらルカのほうが低い。
ただ…自分の気持ちにも相手の気持ちにも、究極に鈍いのはミクだ。
あの2人に感化されて、こうやって行動を起してる私もどうかとおもうが…

結局のところ、みんな偏差値は低いというわけだ。

天の邪鬼な嫌いだと…本当に嫌われているわけではないと予測できても、想う人に嫌いと突き付けられるのは痛いものだ。

好き、と伝えたら泣かれた。
ダムが決壊したかのように、涙がぶわっとあふれかえる。
三度目の好きを伝えて、ルカを引き寄せる。
耳元で、もう一度ルカの気持ちを訪ねた。

「嫌いです。嫌い嫌い…嫌い」

嫌いと言いながら、ルカの手は私のシャツを掴む。
可愛い…
あまりの可愛さに、もう押し倒してしまおうか思っていると小さな声でルカが続けた。

「…だけど、好きです」

可愛くて可愛くて、思わず笑ってしまったら、やっぱり嫌いですと返された。

ゆるりとルカが逃げようとするから、強く捕まえる。
こうなったら、既成事実を作ってしまえ、そう思って少し体を離すと、下のほうで抵抗があった。
ルカの手は、いまだ私のシャツを握りしめている。

何度目か分からない好きを伝えて、目が開いたままの彼女にキスを落とす。
さっきまで嫌い嫌いと連呼していた割に、逃げようとしない。
本当に天の邪鬼…

「私の好きはこういう好きよ」
目を合わせずに、ことりと私の肩に顔をうずめた。
「メイコはずるいです…」

あの時、勢い余ってルカを押し倒さなかった精神力は、褒め称えられるべきものだと思う。


翌朝、久々に早く起きたと思ったのに、リビングには既に全員集合していた。
我が家で、最強の寝起きの悪さを誇るミクでさえも。

2人の金髪が口々に「メイ姉おそーい」と文句をいう。
気分が良すぎて熟睡してました、とは言わずに洗面所に直行する。

顔を洗いながら今後のことを考える。
彼女はきっと、公表したがらないだろうから、しばらくは黙っておくか…
リンやミクあたりには言ってもいいかもしれない。

だめだ、リンの事だからダブルデートしようとか言い出しそうだ。
やっぱり、黙っておこう。
あぁ、そういえば、今日は水が冷たくない。

後でカイトをほめてやろう。

リビングに戻ると、レンリンはもう朝食を終えていなくなっていた。
ルカは一人静かにヨーグルトを食べていた。

ヨーグルトすきなのかな…いつも食べてるし…

「ルカ、おはよう」
スプーンをくわえたまま、くるりとこちらを向いた。
何ミリか首を傾けて、目だけでほほ笑む。

「おはようございます」
今朝は随分ごゆっくりでしたね、とそのまま続ける。

驚いた。
ルカの事だから、恥ずかしがって即行逃げていくかと思った。

向かい側に座るのは、青い髪の男とマスター。
青い奴に脅威はないが、マスターは少し危険かもしれない。
おっぱい星人だし…
さっき黙っておくと決めたが、まぁいいか…

「マスター」
「うん?」
「ルカは私のものなので、手を出したり、怪しい行動をとったら東京湾の底に沈めますよ」
ぶふぉっと口から牛乳を吹き出す。

汚い…

「邪な目でみたりしたら、富士山の山頂で真っ裸にして吊るします」


彼女のほうをみたら、案外平気な顔でこちらをみた。
そして、目を細めて笑った。

だから、私も目を細めて笑った。







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