10000打企画
まだ昼食には少しはやいけど…
のんびりお散歩でしていれば、きっとちょうどよくお腹もすくよね。
散歩がてら、ランチでも行きませんか?
メイコの手から水分を吸い取るハンドタオル。
ぱたぱたと小気味いい音をたてて、メイコが自分の手を拭く。
お昼ご飯なににしようかー、なんてニコニコ笑っていうけれど、どう考えたって昼食にはまだ早い。
メニューやら時間やら、昼食について真剣に悩んでる私を差し置いて、メイコは再びごろんとソファに横になる。
「あ、メイコさん!そんなところにタオル置きっぱにしないでください」
はーいと素直に起き上がるメイコは、いつもの数倍ご機嫌な様子。
メイコの柔らかな笑顔も、外の日差しも、それはそれは穏やかで。
母親のように忙しなく動きながら、それすらもどこか楽しくなる。
洗濯物の篭にタオルを入れて、メイコが戻ってきた。
鼻歌まで誘い出す、今日の天気。
「ねぇメイコさん」
「ん?」
随分と気分が良さそうに、ふらふらっと窓に近寄っては、またすぐに戻ってくる。
ぱたぱたとスリッパの軽い音が、彼女のご機嫌メーター。
「散歩がてら、ランチでも行きませんか?」
「いいねぇ、おっしゃれ〜な感じ!」
楽しそうなメイコに、思わず笑った。
なんで笑うのー。とふてるメイコも笑いを堪えて変な顔。
耐えきれなかった笑いの決壊はもろく崩れ、二人してげらげらと笑う。
涙があふれメイコがかすむ。
そのメイコも、目の端に溜まった雫を拭いつつ、おさまらない笑いに腹を押さえている。
「あぁ…笑った笑った…ぅし!そうときまればさっそく出かけよっ」
まだ、どこに行くとか何食べるとか、全然話してないのに。
その気になったメイコは、既に出かける準備。
家中に響くような声で、ルカどの靴履いてくー?などと叫んでいる。
「パンプスー!ヒール低いやつ履いていきまーす」
負けじと大きな声で叫べば、やっぱり大きな声でかえってくる。
「赤いのー?」
それでーすと返答してから、帽子を被る。
私可愛い?よし、今日もルカは可愛い。
なんて、恥ずかしい問答を心の中で繰り返す。
鏡の中でほほ笑む私は、きっと誰から見ても幸せそうなはず。
はやくー、と急かす声が聞こえる。
玄関まで走っていくと、色違いの黒いパンプスを履くメイコが待っていた。